◆低い日本の子どもの幸福度
子どもたちが幸せに暮らせる社会を是非とも実現していかなくてはならない。不登校、児童虐待、子どもの自殺は、2020年度の統計で過去最多となった。日本の子どもの7人に1人は「貧困」状態にある。また、国連児童基金(ユニセフ)の2020年報告書によると日本の「子どもの精神的幸福度」は先進国38か国中ワースト2位。子どもを軸に据えた抜本的な政策転換が急務だ。
日本が1994年に批准した「子どもの権利条約」は、親の経済状況などにかかわらず、すべての子どもに生きる権利や教育の権利を保障している。しかし、児童福祉法に同権利条約が明記されたのは、児童虐待で亡くなる子どもが相次いだ2016年と遅く、その後も条約の理念を実現するための国内法の整備は一向に進んでいない。
◆伝統的家庭像では解決できない
政府与党は、子ども関連政策の司令塔となる「こども家庭庁」を創設するという。当初は「こども庁」だったが、伝統的家庭像(夫が働き妻が家庭を守る)や子育て・介護を家庭内の責任とする自民党保守派に配慮して名称が変わった。少子化対策に重きが置かれる可能性が強く、個人の多様なライフスタイルに政府が介入してくる恐れもある。
この方向では、貧困に窮するひとり親家庭、孤立する外国人の親、親族の介護を担うヤングケアラーなどの窮状はさらに深刻さを増すばかりだ。
◆子どもの最善の利益
子どもの権利条約が掲げる「子どもの最善の利益を優先する」という理念を打ち立てずに、子ども政策の立案や新たな組織づくりはできない。「こども庁」の創設は「こどもの権利基本法」の制定と車の両輪として推進すべきだ。
子どもたちが仲間と一緒に遊び、学び、育ち、幸せな子どもの時間を過ごせるようにすることは大人の責務だ。子どもたちが未来に希望を持てる社会を創っていこう。